道ログ2

群馬県在住のおじさんがブログを書く

スーパーのレジでおじいさんに声をかけられた話

    元車掌が語る指定席問題

 これ読んでて思い出した。関係ない話なんですけど。

    なお元ネタはコチラ

 ある昼下がり、スーパーのレジに並んだ。混んでいるというわけではないが、4つほど開放されているレジにはどこも2、3人が並んでいた。
 俺の前には白髪の男性がおり、その前には中年の女性が、間もなくレジの順番になるところだった。
 その女性はカゴにたくさんの商品を購入してて、順番になるとタバコも注文していた。時間がかかりそうだな、とは思ったが、コンビニではなくスーパーであるから、日常のことであって特に気にもしなかった。

 その時だ。
 俺の前に並んでいたその老人が、俺に話しかけてきた。

「普通さあ。俺がこうやってこれしか持ってないんだからさ、ほら、あれ、お先にどうぞとかって言うもんじゃねえかねえ」

 はあ? と思った。はあ? 何が?
 確かにその老人はカゴも持たず、手に何か、2つほど商品を持っていただけだった。
 そりゃまあ、気持ちはわからなくもない。これだけのものを買うのになんでこんなに待たなきゃならねえんだと。前の女なんてこんなに買い物して時間かかるんだから、先にやらせてくれたっていいじゃねえか、と。
 だがしかし、なんだかおれはその瞬間にものすごく腹が立って、愛想笑いを浮かべて「はあまあ、そうですねえ」程度のことを言うことすらできなかった。そして俺は言った。

「さあ。どうでしょうねえ。順番ですからねえ」
 ピクリとも眉を動かさず、口角も上げず、むしろ老人の目を睨みつけながら言った。腹が立っていたのだ。
 老人は期待していた答えじゃなかったのかなんなのかわからんが、
「まあそりゃそうだけどな。でも、俺なら言うよ。お先にどうぞってな」

 この手のことを臆面もなく話す相手のため、当然声がでかい。おそらくレジのスタッフさんにも、俺の後ろに並ぶ人にも、そして前の女性客にも聞こえただろう。
 俺は内心焦った。この老人はイライラしているのだ。ただでさえ少量の買い物で待たされていて、先に行かせてくれてもいいのにと思いつつも叶わず、つい愚痴をこぼしてしまいたくなるくらいにイライラしているのだ。その相手に、「別に」と反応してしまったら、「何だ貴様若いくせに生意気だ」と声を荒げるかもしれない。そんな理不尽な逆ギレぐらい屁とも思うはずがない。なにせ「先に行かせるのが普通だろ」と初対面の他人に言ってのける人間なのだ。
 そうなれば店にも、前後の客にも迷惑がかかる。それは本意ではない。その時には俺が周りの人間から「なんて下手な返しだ。それくらい流せよバカ」と罵られることだろう。それは避けたい。だがしかし、俺も腹が立っていたのだ。「俺なら言うよ」と言い放った老人に対し

「いや、俺は、どうかなあ。まあ、それぞれじゃないっすかね」

 さすがに「いや俺はそんなこと言いませんよ」とは言えなかった。確かに自分が大量の買い物をして後ろに少量の人がいた場合、譲ることもあるだろう。だから「俺なら言うよ」に対して「いや俺は言わないよ」とは言えなかったものの、「わからないし言わないことが悪いとは決して思わない」と言ったのだ。

 ヒヤヒヤした。いつ、何だ貴様その態度は! となるのかと心配していたのだが、俺も腹が立っていたのだ。来るなら来い、と少し思っていた。
 老人は「そりゃな、まあな、それぞれだけどよ…」と言っておとなしくなってしまった。

 
 繰り返すけど、この人の気持はわからなくない。俺も同じ立場であれば「先に行かせてほしいなあ」と思う。だがしかし、俺が気に入らないのは、「先に行かせてもらえませんか」とお願いをすることもしないで、あたかも譲らなかった女性がけしからん、的な物言いを、他人にしてくることだ。しかも明らかに同調を誘っている。「あいつ気が利かねえなあ」と、指を指してくれる仲間を募集しているのだ。まったく気に入らない。
 なにより、そんな尻の穴の小さなことを、見ず知らずの他人である俺にいきなりぶちかましてきたことだ。そんな失礼な話ってある? なんなのその俺ルール。スーパーのレジでおとなしく順番を待つこともできない。先に行かせてもらえないかな? の一言も言えずに悪口を聞こえるように言う。しかも仲間を募集しちゃう。

 若者よ。たくさん言っていいぞ。「まったく昔の若者は」ってな。
 時代劇ばかり見て育って世代だから、他人のテリトリーにずかずか踏み込んできて勧善懲悪当たり前、俺こそが正義、みたいな思想に染まっている。時代劇は規制したほうがいい。ってな。

 そんなことが、ありました。