道ログ2

群馬県在住のおじさんがブログを書く

池上彰さんと朝日新聞のことを少し

 最近というかもう何年もこの手の時事ネタを扱ってないような気がして気が引ける。
 今更俺がここで何かをどう言うことになんの意味もないわけなんですけど、ちょっとこれは思うところがあって、まあ書いておきます。

 記事元はこれです

  池上彰氏が原稿掲載拒否で朝日新聞の連載中止を申し入れ(週刊文春 9/2)

 引用してもいいですか?

池上氏本人に確認したところ、事実関係を認めた。

「連載を打ち切らせて下さいと申し出たのは事実です。掲載を拒否されたので、これまで何を書いてもいいと言われていた信頼関係が崩れたと感じました」

 池上さんが朝日新聞の月一での連載の中で、慰安婦問題について「謝罪すべきだ」と書いたところ、朝日新聞側が「これは掲載できない」と掲載を拒否したため、池上さんが連載中止を申し入れたというニュースです。
 俺は慰安婦問題とか全然わからなくて、これまで一ミリも触れたことないと思います。何が問題かわからないというより、まずもってどこで何が起きたのかすら理解していないから。
 あと、新聞も読んでこなかったので、朝日がどういう新聞かとか、読売がどうとか産経がどうとかそういうこともわかりません。
 だけどこれ、文春がこれをとってきて、大きな騒動になっていくってのはよくわかります。そんでもって池上さんが「はいそうですよ」と答えたろころがまたこれ非常に面白いと思うんですよ。

 新聞も一企業ですから、それなりにカラーがあっていいと思うんですよ。それこそ言いたいことが言えないようじゃいけないわけだし、うちの新聞としてはこういうスタンスで報道していくというものはむしろ明確でなければならないと思うし。
 しかしながらこれはそういう問題ではなくて「自分たちにとって都合が悪いことだからそれは黙ってないとだめですよ」と言ってしまった。この際に問題なのは、新聞社側が圧倒的に強者であって、執筆者である池上さん個人は圧倒的弱者であるということで、強者が弱者の言論をその力をもって封じ込めてしまうというのは、これはもう言論の自由を「報道機関である朝日新聞が」封殺しているということであって、まあその点が非常に問題であると思うわけです。

 そんでもって、もうひとつ俺がこれについて書こうと思ったのは、俺は池上さん好きだから。
 昔のブクマを探したら記事があったので紹介しておくとこういうのがある

  「久米宏のラジオなんですけど」(TBSラジオ)今週のスポットライト!!ゲスト:池上彰 書き起こし。(虚馬ダイアリー)

 これ、久米宏さんのラジオ番組に池上彰さんがゲストとして出演して対談したときの、それの書き起こしです。主さんお疲れ様でしたといつか伝えたい。
 これは、池上さんがニュースのレギュラーを全部降板すると言った、2011年3月の放送です。

 この二人は俺すげー好きで尊敬してると言ってもいいんです。
 俺も曲がりなりにも話すことが仕事の一部ですから、久米さんの問題への切り込み方とか、池上さんの解説とか、そういうものっていうのはすごく参考になる。ものすごいレベルの高いであろうことを、素人、それもド素人である観衆のために技術を駆使するっていうことも含めて、俺はものっすごい参考にしなければならないと思ってるんですよ。
 で、改めてこの記事を久しぶりに読ませてもらって、うーんやっぱり二人はすごいなーって思う。二人の世界で話しているようで、常にリスナーにどう聞こえているか、どう聞かせたいかということを意識しているって言う点ですごい。
 これ、ネット、特にSNSあたりを利用している人にも是非理解してもらいたいことなんですけど、常に誰かの目があるということを意識して書いている人っていうのは、著名人の中にはものすごく多いんです。だから素人に「こいつ何言ってんだ」と思われても平気なんです。
 話それる。いかん。

 で、そのラジオでの一節にこんなことが

池上:それで、7月1日にどうしようかなと思って、朝日新聞とNHKの両方に願書を出しておいて、ギリギリまで迷って、ま、NHKを受けに行った、ということですね。

久米:はあー。どっちがよかったですかね?

池上:どっちでしょうねえ・・・。・・・ああ!でも!おかげさまで、こういう仕事(テレビの仕事?)やってたおかげで、朝日新聞にコラムを持つことが出来ましてね。朝日新聞の記者がコラムを持つって、大変なことなんですよ。よっぽど文章がうまくないと、朝日新聞記者がコラム持てないんですね。私、朝日新聞に入らなかったおかげで、朝日新聞にコラムを持つことができまして。

久米:入らなかったからこそ、両方制覇出来たと(笑)。

池上:そういうことですね(笑)。

 入社試験の日がNHK朝日新聞が同じ日で、池上さんはNHKを受験して、NHKに入ったと。
 そしてそのNHKの記者であった池上さん、素人に対してとてもわかり易くニュースを解説することが超一流である池上さんが「よっぽど文章がうまくないと、朝日新聞記者がコラム持てないんです」と、朝日新聞のことをすごく認めている発言をしてました。
 その池上さんが、朝日新聞の連載を中止すると申し入れたということが、俺としてはこの問題の大きさを物語っていると思うんです。

 記者をやってきたから、しかもNHKですから、制限が多いということなんて誰よりも知るであろう池上さんが、それでもなお今回の朝日新聞の対応には我慢ができない、という意思を表明したわけですよね。これは俺、いかんと思うんです。
 だからといって朝日新聞がこれによってそんなに読者からダメージを受けるかといえば、それ、そんなことないと思ってはいますけどね。この問題はおそらくネットの枠を出ないんじゃないかと思っていて、それはつまり、朝日新聞の購読層とはあまり重ならなかったりして、そんなには痛手にならないのではないかと、どうだろうか。
 某新聞がHENTAI新聞と揶揄されたころとはネット文化も相当に裾野が広がってきているので、どうなるのか楽しみではありますが。


 さて以下余談なんですけど、池上さんが「わかりやすい」と評判なわけで、テレビでもいまだに引っ張りだこなわけで、それはなぜかというと、その答えもここにあったりするので少し紹介しておきます。
 池上さんはニュース原稿を「書く」「記者」であって、ニュースを「読む」「アナウンサー」ではなかったんです。「読む」プロフェッショナルは、久米宏さんの方です。
 ではなぜ、池上さん本人がテレビで伝える役が人気なのか、それは、教育テレビの「週刊こどもニュース」をやってたからだと思います。そして、こどもニュースとニュースステーションの、意外な確執? も明らかになっています

池上:週刊誌でいうところの編集長だったんですね。はい。で、来週、どんなことを取り上げようか、というテーマは私が決めるわけですね。で、一緒にやってるスタッフは、教育テレビの子ども向け番組を作ってるスタッフなんですよ。だからニュースのことには詳しくないわけです。そうすると、どのニュースを取り上げるかという判断は、報道にいるわたしが決めざるを得ませんよね。

久米:うん。

池上:それからニュースのことをよく知っていないと、どんな模型にするかってことを、考えられないわけですよ。ですから、「こういう模型にしようよ、ね。」と案を出して、で、その時にスタッフは子ども向け番組のプロですから、じゃあ子ども向けにするには「こうしたらどうですか?」というアイデアを出してくれて、一緒に作っていった。で、基本的な模型の設計は私がしてた、ということですね。

久米:あの番組は「ニュースステーション」が始まってしばらくしてから始まったんですけど。

池上:はい。

久米:とにかく「ニュースステーション」のスタッフには全員に、「あの番組は見ろ!」・・・ということだったんですよ。

池上:・・ということが内部情報で漏れてきました。

久米:(爆笑)。

池上:ええ、「ニュースステーション」はそう言ってるよ、という話が伝わってきまして。

久米:もう全員必見だ!ということだったんですけど。模型なんかにしても・・・・結構難しいんですよね。模型ってね!

池上:難しいですね。

 ニュースステーションスタッフは全員、週刊こどもニュースを見て勉強しろ! ということだったようですよ。おもしろい。
 二人のプロフェッショナルがお互いに刺激を受けていたことを聞いて、身震いがするような感じになりますよね。なるだろ? なってよ。
 そして二人は、俺にとってとっても大事なことを語ってくれたのでそれを最後に紹介します。つーか引用ばっかりですみません。

久米;・・・・ただね、ここで「ニュースステーション」と「こどもニュース」を比べてもしょうがないんですけど、「週刊こどもニュース」は「徹底的にわからせよう」という姿勢は、尊敬していたんです。とても。

池上:はい。

久米:「ニュースステーション」はね、今だからこそ言うんですけど、「分かった気にさせる」だけなんです。

池上:いえ、そんなことないですよ。

久米:テレビ見てたひとが「あ、わかった!」という風に、錯覚してくれれば十分だったんです。それ以上、本当にわからせるのは不可能だって、ぼく、思ってましたから。ニュースってものはあまりにも深くて。すべてのニュースはあまりにも深い。だから根本まで説明しない!1日かかっちゃうから!不可能だから!そういう場合はテレビ見てる人に、「分かった!」って一種のカタルシスをね、伝えられれば十分だと思ってたんです。

池上:ええ。はい。

久米:「こどもニュース」はちがったんです。根本的な「言葉」の問題から始まる。そのことは、一体どういうことなの?そんなことやってたら時間がいくらあっても足らないんですよ、オトナの番組では。

堀井:やさしく伝える方が難しいですもんねー。

久米:やさしく伝えるほうが難しい。みんなわかってんだ。言葉の問題は、池上さんはこだわってらっしゃいますけど。みんな「わかっちゃった」ふりをしてる人も多いけど、そんな根本を考えてないんです、言葉なんて。

 俺は宗教家なんですけど、神様の話を人に噛み砕いて伝えていくのは仕事だと思ってるんですよ。その時にですね、「わかったふりをしている」人にはたくさん会うんですけど、「わかった」って人には実はあまり出会えません。
 単語を知っていることでわかったような気になっちゃうんです。「言葉の意味」をわかってこそ、理解ができる。だから、俺が話すときにはあまり専門用語を使わないです。伝えなければならない相手は、ニュースステーションを見ているような大人ではなく、こどもニュースを見ているような大人だからです。
 特に宗教というかあくまで信仰を語るということは、これはもう、物事の善悪をはっきりさせようという作業なわけですから、なんとなく表面的にわかったようになられては困るんですよ。言葉が一人歩きを始めてしまうんです。だから、「これっていうのはつまりこういうことなんですよ」という部分、それを伝えることが、大事だと思っていて、その俺にとってはこの、池上さん、久米さんというのは正義だと言ってもいいわけなので、今日はこのようなエントリを書いてみた次第です。

 ごきげんよう