道ログ2

群馬県在住のおじさんがブログを書く

水嶋ヒロ「KAGEROU」と五木寛之「親鸞」

 久しぶりに本を読んだのでなんとなく記録

 言わずと知れた水嶋ヒロポプラ社のなんかの賞で大賞を受賞した話題作「KAGEROU
 著者名は齋藤智裕、これは本名なのかな? もう二年くらい前になると思ったけど、受賞当時はおおきな話題になったものでしたから、一度は読んでみたいと思ってました。
 感想としては、Amazonレビューなどにある通りで、「つまらない」「ひどい」「駄作」「馬鹿にするな」といったところです。まわりくどく理由をつけて評するまでもなく、想像通りかそれ以下の作品だったとしか言いようがない。
 読み終えて思ったのは大きく三点かな。

 1、文章のリズムが悪い
 2、比喩表現が下手
 3、人生なめるな

 1はまあ、多分技術の問題かと。要は下手なんでしょう。2は、もうね、文章を読むことをしない人間じゃないのかと思えるくらい。具体的すぎる比喩なので、Aを表現するためにBという表現を使ったりする。読んだ俺にはBという表現が直接印象に残る。「最初からBと書いてくれればそれでいいのに」と思う。そんなことが連続して繰り返される。3はもう、著者の能力の限界じゃないですかね。これは、大賞をくれてやったポプラ社という出版社の責任ですよ。すべての登場人物に感情移入できないし、生きることや死ぬことについて考えたことがないんだろうとしか思えないような、想像力のなさは、物語の主人公と同年代の俺にしてみれば「馬鹿にすんじゃねーよ俺だって必死で生きてるんだよ」と怒りしかおぼえない。フォローのしようもない。
 子供が見る戦隊ヒーローものの物語のような、そんな薄っぺらい物語でしかない。良いところは一つもない作品だった。


 よしもとばななを十何年かぶりに読んだけど、いいわー。おもしろいわー。
 学生時代によしもとばななを読みあさったときはなにがどうよいのかわからなかったけど、今読むとよくわかる。よしもとばななの登場人物ってだいたい変態なんだわ。それでもそれなりにこの社会の片隅でいきている、しかもそこそこたくましく、と思うとものすごく勇気づけられるんだな。うん。今読んでるのは「王国」


 それに対して「親鸞」これはおもしろい! 2009年に発売されたらしいんですがこれはおもしろい。
 比べる必要もないけど、それにしてもKAGEROUが幼児の絵なら、この「親鸞」は劇場版機動戦士ガンダムぐらいおもしろい。いや、ガンダムってこう、対象を中心に視点が変わっていくような臨場感をアニメに取り込んだ、劇的な演出の作品だったとガンダム芸人の皆さんが言っていたもので、、、

 とにかくおもしろい。これこそ小説という。一人一人の登場人物がいきいきとおどり、じっくり書き込んであるのに実にスピーディーに物語がすすむ。親鸞や仲間のピンチの時などはハラハラしてページをめくってしまうという、まさに日本語の匠。
 登場する悪いやつって言っても、現代の物語の悪いやつ、例えば、ヤクザだったり頭の良すぎる若い子だったり、テロリストだったり、そういうやつよりは全然地味ですよ。当然鉄砲とかもないし。しかし、恐怖がある。飛び道具と言えば弓矢や石くらいなのに、読んでいて冷や汗が出るくらいに緊張するシーンがある。いやま別に戦闘ものじゃないんですけどね。
 つまりそれは生きることや死ぬこと、とくに「死」が日常の中にあふれている世の中だからこそ。悪い奴が人を殺す、なんらかの理由があれば人を殺す。殺さない理由というものがない。人を傷つけ殺すことにためらいのない人間こそ恐ろしいということも読んでいてわかってくる。つまりそれは、生きることの意味を考えるきっかけにもなった。
 ケータイはおろか電話すら電気もない時代の物語なのに、まったく飽きない。

 この上下巻に続いて、激怒篇上下巻が出されているようで、今激動編の上巻まで読み終えました。
 とにかくおもしろい。これこそ、小説だ、と思う。