道ログ2

群馬県在住のおじさんがブログを書く

すべての接客業のみなさんへ。

   とどけたいことば(とらねこ日誌)

 を読んだ。恐れ多くも、とらねこさんのエントリを読むのは初めてだった。すみません。で、主題についてはちょっと言えないんですが、前半部、販売接客についての記述があったので、なんとなく思い出しながら書いてみます。

 ええと、

その方は『どらねこさんだから買うんだよ』と言ってくれたけど、僕は本当は『貴方の説明に納得できたから買ったよ』と言われる事を目指していた。その説明を聞いてもらう為に必要な手続きが、相手に受け入れられそうな笑顔と好ましい話し方だったのだけれど・・・その方が欲しかったのは、『説明』じゃなくて『笑顔と話し方』だけだったのかもしれない。

 「笑顔と好ましい話し方」は、業界では接客マナーとか言います。それは、「説明を聞いてもらうために必要な手続き」のことじゃない、と、俺は今でも思ってます。
 俺がサービス業をしてた時に初めて受講したマナー研修。俺は30歳になっていて、周りには若い女の子がたくさんいたような場所だったけど。そこで教えてもらったのは

 「マナーとは、自分の気持ちを相手に伝えるための手段」

 ということだった。これは俺が教育をする立場になってからは、ずっといい続けたことでもある。

 マナーと言っても色々あって、他人に迷惑をかけないマナーなら、電車の中でケータイをマナーモードにする、とか、通話はしない、とか、喫煙は喫煙スペースで、とか、そういうことですよね。「私はマナーを守って行動することで、他の人に迷惑をかけないようにしています。」というようなもの。これができていないと瞬時に周囲の人は「マナーの悪い人」と思うわけです。
 そのほかにもいくつかのものがありましたが、忘れました。そんで、相手を満足させるマナーとかってんがあって、さらにその上、「相手を感動させるマナーを身につけましょう。」とかっていうのが、そういう接客マナー研修でのお題目とされていた。つまり、期待値をはるかに上回るような接客態度、店作り、それを目指しましょうという。

 じゃあ、その、すばらしい接客態度、言葉遣い、身だしなみ、身のこなし、ディスプレイや清掃などの店作り、それらをひっくるめて「マナー」なわけだけれども、マナーが「自分の気持ちを相手に伝えるための手段」であるなら、何を伝えたくてそのようなものを実現し続けるのか。
 
 「ご来店くださり誠にありがとうございます。」

 の、気持ちだ。
 他社ではなく当社を、他店ではなく当店を、お選びいただきありがとうございます。どうぞこちらへおかけくださいませ。という、気持ちを抱いていれば、そういったマナーを磨いていくことを、自発的にするだろう。という、ことなわけだ。
 ぶっちゃけくだけた言い方に換えると

 「おお。よくきたなあ。ささ、あがれあがれ。いやー。よくきてくれたなあ。お茶入れるから、そこ座って。ご飯たべたか?」

 とでもなるでしょうか。
 その気持ちが、「笑顔」になり「好ましい話し方」になる。ということ。もちろん接客の場での笑顔や話し方は、技術である。その技術はなぜ必要であって習得しなければならないのか、その答えもまた明確であって、あらゆる世代、あらゆる環境のお客様に分け隔てなく失礼がなく、そして好感を持ってもらうための基本だから。だ。
 笑顔や話し方もマナーなら、身だしなみももちろんマナーであって、つめの長さ、髪の色、女性のメイクや男性の髭、服装、どれも、「相手を不快にさせないための身だしなみ」を、整えることである。

 お店をやっていると、「買ってくれてありがとう」になりがちだ。しかし、根本は「ご来店ありがとうございます。」なのだ。その来店という行動の理由は様々だけれども、店舗という「待ち」の接客においては「来店」は「購入」以上にありがたいことなのだ。
 ながくやっているとその意識が薄れてきてしまうのが、頭の痛いところではある。
 「来店」という行動からはじまるお客さんの次の行動パターンは、予測不可能だし、こちらの思い通りになどいくわけはない。ただ、ものを買う買わない以外のところで「来てよかった」と思わせられるかどうかは、店側の握るところが大きいと思う。一度来て嫌だった店には二度目は行かない。ちょっと行っただけなのに、なぜかまた行きたくなった。とかは、誰でも思ったことがあることだと思う。

 接客なんかしてると「お客のほしがるものは売ってはいけない」なんていう言葉を聞く。これは別に奇をてらって言葉でも、釣りでもなくて、実に正しい言葉だと思う。
 接客の基本は「質問」だと思っている。お仕事は? ご家族は? 休みの日はなにしてますか? そこから得た情報をフルに活用して、一つのストーリーを作り上げるのが、接客だと思う。
 「これが欲しい」というお客さんからは「どうしてそれが欲しいと思ったのか」ということを聞く。できるかぎりここは根掘り葉掘り聞く。もちろん同調しながらだ。否定する店員は馬鹿以外のなにものでもない。ある程度の情報がでてきたら、頭の中で他の商品と比較する。まあ、お客さんが「ここがいいからこれがいい!」と思った以上に、「そこがほしいならこっちのがいいよ!」という提案ができる場合もあるし、もう一つ、大事なのはむしろこっちで、
 
 「それなら今お使いのソレでもできますけど?」

 という提案ができないかどうか、ということだ。つまり、「欲しい」と思っているお客さんに「待った」をかけるのだ。その欲しいは、本当にこの値段に見合う価値があるのか、その判断をゆだねる。そしてなにより、「修理」という選択肢をここで突きつける。今使っているそれ、修理して使うこともできますよ。まだ保障期間内だから、保証修理が可能なら無料で直るよ。使い慣れたものを長く使うという選択肢もあるよ。という情報を提供する。
 そうした総合的な情報を小出しに小出しにしながら、それでもなお、「やっぱりこれが欲しい」といえば、納得した買い物をしていただけるだろし、「え。そうなの?ならそっちがいいな。」となればまた、納得してもらえると思う。さらに「修理できるの? なら、使い慣れてるから、長くこれを使いたいなあ。」となれば、文句なしに納得してもらえると思う。

 ただ、俺の場合は、販売だけの接客現場ではなかったので、そうしたことで幅はあったと思う。販売のみの現場というのは、そういう意味で限界はある。いくらいい提案をしても、販売につながらなければ、お客さんは満足してくれても自分の成績は落ちる一方という。
 しかしそれでも、お客さんのためを思うなら、自分の知識をフル稼働して提案し続けるのが、正しいと言うか、かっこいいんじゃないかと俺は思ってるけれど。

 さて。長くなった。最後に、俺が見た自分の店での成功事例を簡単に2点書いておきます

1件の解約が3件の成約に

 まあ、俺がケータイ屋だったのは過去のエントリからも明らかなので隠しませんが、ある日、女の子と母親が解約をしにきました。
 解約というのはどっちかってーとやっぱりあまりよくなくて、キャリアとしては「解約阻止」とかに力を入れてます。中には「解約のお客様こそ成約のチャンス」みたいな無理難題を謳う人間まで出てくる始末。
 店にいると解約なんか珍しくもなんともないので、解約を受け付けました。解約の理由みたいなことを聞くのですが、どうやらお母さんが他社で、娘さんがうちのケータイだっていうことで、お母さんが使ってるキャリアに統一するために、娘さんのを解約する。ということでした。
 そういうことでしたら解約を阻止する必要もないのですが、なんとなく他社にそのまま流れていくのもおもしろくないので、目一杯丁寧に解約の手続きをしました。新しい方のお店に行くとこうこうこういうことがあって、ソレに対してはこうするといいですよ、とか、せっかくだからこういうサービスがありますから加入するといいですよ、とか、おせっかいなくらい、丁寧に解約を受け付けました。
 半日後くらいにその親子がまたお店にきました。俺は「あれ。メモリコピーかな。もしやこちらの手続きがうまくいかなかったのかな。」とか、どきどきしながら迎えたところ、なんとお母さんと、お母さんのご姉妹と、3人揃って、こっちのキャリアに変更してくれということでした。
 娘さんのケータイは、まだ新キャリアに移行前でうちのケータイのままでした。
 「???」と思っていると、お母さんが鼻息荒く仰いました

 「向こうのお店行ったらさ、散々待たされたあげく、おねーちゃんの態度が悪くて頭来てさ。いいわよもう! って、かえってきちゃった。ここは、娘が解約するってのに、細かく丁寧に教えてくれて嬉しかったから、いっそのことみんなでここにしようと思ってね。やってくれますか?」

 喜んで手続きさせてもらいました。

お子さんにケータイを持たせたいと、若いご夫婦が

 お店にやってきました。小学校低学年の、女の子と、俺より若いくらいのご両親、なにより、お洒落で、気後れしそうなくらいでした。

 いつものように応対を始めると、「娘さんにケータイを持たせたい。夫婦とも仕事をしているので心配。ここのケータイなら居場所が簡単に分かったり、緊急通報機能とかあったりしていい、、と聞いた。」とのことでした。
 当時子供向けケータイは利益も大きく咽から手が出るほど欲しい一本でしたが、俺は通り一遍の説明を手短に済ませ、
 「お父さんお母さんは、どちらのケータイをお使いですか?」
 とたずねた。すると、二人とも、うちのケータイではありませんでした。

 その際、選択肢は二つ。「ご両親とも、うちのケータイに変える」または、「お子さんのケータイは、ご両親と同じキャリアのケータイにする」(特に子供用ケータイの機能は同じキャリア同士のほうが有効利用できるため)

 おそるおそる二点の提案をした。もちろん、その時点でお子さんにうちのケータイを購入してもらえる可能性は諦めながら。
 で、予想通りお父さんが仕事の都合でキャリアを変えられないということだったので、俺は迷うことなく
 「でしたら、すぐそこに、そのキャリアのショップがありますから、このままお子様用ケータイを見に行かれてはいかがですか? 正直、うちで謳っているような機能は網羅していますし、なにより、家族では同一キャリアに統一している方がお得だし安心ですよ。」
 と薦めました

 「あ。そなの? でも、いいの?そんなこと言って。。。?」

 ごく自然な反応だったと思います。
 いいのか悪いのかはわかりません。というか言うならば立場上悪い提案だったとは思いますが、そこはどう考えても、あのご家族にとっては、そうすることがベストだったと思いますので、俺にとってはそれは「いい」んです。

 数時間後、再び訪れたそのご家族は、「おかげで無駄なくいい買い物ができました。」と、わざわざ立ち寄ってくださいました。お嬢さんは、大切そうに新しい、俺には見慣れないケータイを握り締めながら。
 

いつものごとくまとまらない

 書き始めて途中で眠って一日以上が過ぎましたので、もはや軌道修正不可能です。
 ほんとは経営陣への要求も含めた内容にしたかったのですが、そこまで掘り下げる自信がありませんので、よろしければ関連エントリなどもご覧くださいませ。
 なお、それらはこれ以上にとっ散らかっております。

 「マナーとは、自分の気持ちを相手に伝える手段である」

 それが、ご理解いただけたら、とてもとても有意義に感じます。
 それでは。また。