道ログ2

群馬県在住のおじさんがブログを書く

今更だがスラムダンクについて

 なぜかと言われれば実は今日は珍しく答えがあって、劇団ババロワーズ主宰の彼が「スラムダンクを読んだことがない」とツイートしていたからだ。
 ふざけるなと。今の世の中で、スラムダンク読まないでなにがおもしろいってのか。

 さて。その前に俺の漫画暦を少しだけ。

 小学校中学年から高学年にかけて漫画少年になった。姉が漫画少女だったからだ。少年サンデーを毎週買い、暇があると近所の本屋で何時間も漫画を立ち読みした。

 当時のサンデーにはうる星やつらとか、ダッシュかっぺいとか現役で連載してたと思う。六三四の剣とかは連載を全部サンデーで読んだ。
 
 高校生から大学にかけては、好きな漫画を買うことが毎月のお小遣いの使い方だった。特には、風の谷のナウシカうしおととらスラムダンク、帯をギュッとね、頭文字D、はじめの一歩、すごいよマサルさん課長バカ一代まっすぐにいこう、などなどを繰り返し、繰り返し読んでいた。
 でもその辺のことを話し始めると時間がまるで足りないので、今日はがんばって俺の感じるところのスラムダンクの魅力にのみ限って述べてみるようにする。

以下、スラムダンクのよいところ、俺的な。

 1、バスケ漫画なのに、実況がない。
 そもそもバスケ漫画ってあんまり見かけないし、特に高校バスケものって稀有だ。バスケってのはルールが細かいしコートが狭いので知らない人が見てもなにがなんだかわからないスピード感でゲームが進む。それを漫画にすると通常実況放送的なテキストが入るのだが、スラムダンクにはそれが一切ない。これは実は革命的だと思う。

 2、もっとも大事なシーンを音なしで描いた。
  まあ、県大会の凌南戦の最後と、インターハイ山王戦の最後なんだけど、「台詞なし」はともかく、サイレントで描いたところ。これすげえ。上にも通じるけど、バスケを説明なしで描くって、すごいことだと思う。それがバスケを知らない人にも伝わるのが、すごいところだ。

 3、「バスケがしたいです・・・」すら小さな布石でしかない
 超有名なシーンで、三井が暴れたあとに安西監督を見て崩れ落ちながらつぶやいた台詞。というか、深く読めば読むほどにこの一連の流れはなくてもいいくらいの方向にストーリー全体が流れているのかもしれないが、そんなことはなく、だが、それすらも小さな伏線にしかなっていないところがすごい。

 4、ジャンプっぽく、当初はおそらく県大会で終わりだったはず。
 憶測に過ぎないが、スラムダンク湘北高校が全国出場を果たすことが終着点だったと思う。
 根拠は、まず、県大会が終わってから突然に桜木が牧と共に愛知に行き、ライバルとなるべく人間が二人も現れたこと。同時にヒコイチが大阪で豊玉を倒した男をチェックする。この時点で次の伏線なのだが、終わってみたらなにも回収されないままだった。これは明らかに準備不足と言うかいきあたりばったり。
 なにより、陵南戦の中で桜木が背中を痛めたしぐさがあった。

 にもかかわらず、最後まであのテンションをひっぱったのは天晴れだ。試合展開やストーリ運びには無理があったとしても、漫画的な技術がすごすぎてそれを忘れさせる。

 5、番外編:俺の一番のオススメシーン。
 「あれ・・・ まだいる・・・」

 俺がスラムダンクを思い返すと、必ず最初に思い浮かぶのが、山王工業の河田のこの台詞。
 後半、桜木のリバウンドから生まれる湘北のよいリズムを阻むべく、堂本監督が「河田、桜木につけ!」と指示を送る。河田も赤木に対し「アイツを俺につけろよ。観察してーんだ。」と言った。すでに堂本、河田ともに、試合のキーマンを特定できていた段階だ。そして、湘北ゴール下でスイッチした河田は桜木のブロックをかわし、ダブルクラッチでシュートにいく。
 
 が、そこにはまだ桜木がいた。そこで、上記の台詞を心の中で吐く。
 きわめて冷静な、一つの台詞でしかない。
 そしてさらに、河田は桜木を観察する。
 河田のシュートはリングに嫌われ落ち、こぼれだまを湘北が支配する。その速攻の先頭を桜木が走っている。それをみて河田は思う。

 「ブロックに全力でジャンプしたあと速攻の先頭を走る脚力・・・ 誰もそんなとこ見ちゃいねえだろがな。」

 それを見て不動の安西監督が頭をかきむしりながら心の中で言う
 「おい・・ 見てるか矢沢・・・ お前を超える逸材がここにいるのだ。。。」
 誰よりも早く桜木の才能を見出していた監督が、選手が開花させた才能を見て震えるところであり、また、安西監督と河田だけが桜木の素質に気づいているというシーンでもある。

 その直後、カウンターの先頭で桜木はレイアップシュートをはずす。安西監督は今まで感動に震えていたのだが、石と固まり一瞬でテンションが下がる。
 が、さらに直後、流川がリングに跳ね返ったボールをダンクで叩き込む。
 キャプテン赤木に喧嘩をたしなめられながらディフェンスに戻る二人の背中を観ながら安西監督はさらにつぶやく。

 「しかも、二人同時に、だ。」


 以上がへたくそだが、俺の一番好きなシーンのご紹介であって、もひとつ、最後に言っておきたいことがある。

 6:実はけっこーすごくない?

 山王工業戦の最後は、ついに流川が初めて桜木にパスを出す(それも安西監督が、地獄の2万本特訓の最初に想像したとおりのシーン)ことが取り上げられがちだが、実は、俺が着目したのはそのあとだ。

 伝説の一戦、歴史に残る試合の、その、終了の瞬間、流川からパスをもらった桜木がジャンプシュートを放つ。その時、コート上で飛んでいるのは桜木だけなのである。他の9名の選手はみな、コートに足をつけている状態だ。
 俺はこれにはかなりのこだわりがあって、
 「湘北が山王に勝利した瞬間、桜木だけが跳んでいたのだ!」
 と声を大にしたい。

 陵南戦の木暮の3ポイントもすげえ感動したけど、それ以上に「桜木だけが跳んでいる」ということがすげえ、キタ。他の9人はおそろしいほどにバスケかぶれなのに、半年にも満たないキャリアの桜木だけが、バスケットコートのなかでジャンプしているのだ。これは、すげえことだろう。
 作者井上さんが敢えてそうしたのかどうかはわからないが、俺の勝手な読み方だと、あのシーンは伏線に基づいて、スラムダンクの終了を告げるひとコマだったのだろうと思う。

 というわけで、スラムダンクはいいよー。という話。かな?