道ログ2

群馬県在住のおじさんがブログを書く

深谷ねぎの旅

 嫁さんが実家の神奈川に里帰りをすることになったので、おみやげを買いにでかけたときのこと。
 最近はあづまうどんとかこんにゃくとかを持って帰っているのだけれど、今回はそこにリクエストが加わって「深谷ねぎ」をも買っていくことになった。
 実家のお母さん曰く、うどん「おいしい」と皆に好評らしい。で、

 「ねぎとこんにゃく下仁田名産」と全国的に有名な上毛かるたにもあるように、群馬はこんにゃくが名産である。もちろん蒟蒻畑で有名なマンナンライフ社は群馬県富岡市に本社がある。
 八百屋さんに行くと蒟蒻の切り落としのようなのが詰め合わせで500g120円とかで売られていたりするし、どこかで書いたけどうどん屋さんでうっかりおでんを注文したら大根やジャガイモではなく「味噌田楽」が出てきたりする。そういう土地だ。
 で、お母さん曰くこんにゃく「おいしい」らしい。
 決してブランドこんにゃくとかそんなものではなくて、ふつーにそこらで安売りされてるこんにゃく、である。

 そして今回新たに「深谷ねぎ」が加わった。
 「ねぎとこんにゃく下仁田名産」の下仁田ネギはどこ行ったとかいう突っ込みはスルーする。下仁田って東部の俺たちからすると遠いんだよ。
 話は遡って前回の里帰りの時に親戚からもらったねぎをおみやげに持っていった。そしたらそれがおいしかったらしいのだ。
 ところで実家のお母さんはネギが嫌いだ。薬味程度のネギさえはじいて食べる有様。そのお母さんなので過去ネギを差し入れたことはないのだが、せっかくなので親戚に配ってくれ、という意味も含めて持っていった。
 「いかだ」という名前の料理が実在するかどうかは知らないが、長ネギを切って焼いてたれをかけて食べる。ただそれだけの料理が大好評だったらしい。

 で、リクエストは「泥のついたネギ」である。なぜかと言えば泥ネギであれば庭に植えて保存ができるからということだった。なるほどそういえばウチの庭にもネギが植えてあって夕飯時になると嫁さんが庭にネギを収穫に出かけることがままある。
 なるほどなるほど。じゃあ、ネギを買いに出かけましょうと。

 ところで俺は産まれてこの方「ネギを買いに行く」という行動をしたことがない。もちろん料理をしないということもあるが、ネギ以外の野菜については結構旬や値段の知識はあるんじゃないかと思っている。なぜなら神饌物を買ったりすることも仕事のうちだったからだ。しかし、ネギはその形や香りの強さなどが要因で神饌物にされることは少ない。少なくともあえて買って神饌するということは俺はしない。
 そんな俺が「ネギを買いに行く」ことになったのだ。
 普通に考えるとネギを買おうと思ったら安いスーパーあたりに出かけて野菜売り場でネギを買うだろう。青い部分が切り落とされ、白くキレイにしてある状態の真っ直ぐなネギが2,3本ビニール袋に入っているネギを100円とか150円とかで買うだろう。それを細かく切って薬味にしたり、すきやきにしたりなべをしたりするだろう。ネギって欠かせないものであるけれど主役になるような素材ではないからだ。
 今回についてはそうではなくて「泥のついたネギ、しかもおみやげになる程度の量を買う」という行動だ。
 けっこー簡単に「あそこの八百屋にあるだろう」と思って行ったところにはそんなものありません状態だった。農協の生産物直売所に出向いてもなかった。どうやらネギのピークは冬であって、今の季節はそれほど盛んではないようだった。さて困った。
 深谷ねぎというくらいだから深谷に行けば売っているんだろう。確かに深谷に行く途中にはねぎ畑が広がっていて、ねぎ直売所のようなところも何件かある。で、ちょっと足を伸ばして行ってみた。

 さて問題は値段である。前回親戚にねぎを頂いた際もうちの実家の父が「けっこー高いもんだから実家のお母さん喜ぶだろう」ということが我が家で話題になったのだ。泥ねぎあたりはそんなでもないけど、化粧箱に入ってきれいな状態のものだと箱単価2000円とか3000円とかになるということだった。
 今回所望しているのはキレイな状態でなく泥のついたネギであるけれど、それなりの値段になるのだろう、と思っていた。そもそもちゃんと今の季節売られているだろうか。で、最初の直売所。ここも良く通るところだが、まさか自分がねぎを大量に買うなんて想像したことすらないので、初めて立ち寄ってみた。車で30分超のところ。
 到着しておそるおそる店頭を除いてみると泥ねぎの束が並べられていた。おお。あった。とりあえずあった。あとは値段である。
 車から降りて嫁さんが聞きにいき、手のひらを広げた。

 6、0、0、。。。

 ろ、ろっぴゃくえん!何千円は覚悟していたのだが、六百円とか。
 お店のおばちゃんに念のためたずねる。

 「これは、このへんで獲れたネギ、なんですよね。」
 「ええ。うちで取れたんですよ。」

 なんと、おばちゃんちで獲ったのをそのまま売っているようだった。
 
 

 これがそのネギ。およそ18本ほど入っている。これ、600円である。
 ダンボールの切れ端に「新戒掘り 600円」と書かれているので

 「あの、これ、しん、えびす? ほり? っていうなにかその?」と聞いてみた。
 するとおばちゃんは
 「ああ。これシンカイネギって言うんです。そこ、信号にも新戒って書いてあるでしょう。この辺の地名でね、ネギのブランドなんですよ。」と教えてくれた。
 「ああ。そうなんですね。すみません何も知らずに。」
 「いいえ。ほんとはね、一番おいしいのは冬、寒いときのネギなんですよ。今はもう、春ネギだから、ちょっとアレだけどね。一番は冬の寒いときね。」と教えてくれた。

 「ああー。なるほど。 あ。それともう一つ、これは庭にまた埋めておけば保存できるものですか?」
 「もちろんだいじょぶですよ。」

 知らないことは専門家に聞くのが一番であるなあ。
 俺はネギについてなにも知らない人間だと言うことを改めて痛感した。でも今日ちょっとだけ詳しくなった。

 店頭にはネギ以外にもいくつかの野菜や果物が並べられていて、苺が安かった。Sサイズなので小さな粒なのだが、一パック120円! 4パック入り一箱では450円と割安だった。
 気分がいいので一箱買って実家やお友達の家におすそ分けした。小ぶりだけど甘くておいしい苺だった。

 そうして俺たちは無事深谷ネギを安く手に入れることができたし、おまけにおいしい苺も安くたくさん食べることができたのだ。