道ログ2

群馬県在住のおじさんがブログを書く

一歳児の顔面に火傷を負わせた親の反省文

<過去ログです。リアルタイムの話ではありませんので。>

 0時半。
 夜も更けている。病院から帰ってきて2時間半。
 KTAも寝た。

 19:30 「さっき奥様から電話がありましたけど。」

 めずらしく嫁さんから携帯ではなく会社に連絡が。
 仕事もひと段落すると携帯にも着信履歴があり、「なにかあったな。」と直感。
 電話をかけると、KSKの大泣き声と、落ち着いた嫁さんの声が聞こえた。

 KSKが、味噌汁を顔面にかぶったらしい。

 以前からここでコンビニ受診はいかんだの、時間外救急には必要以外かかるべきではないと高らかに言っている身分で「すわ、救急車」とも言えず、なるべく早く帰ると言って電話を切った。
閉店まであと20分。急いで帰れば一時間後には家に着ける。それからでも遅くはないか。実家の両親は・・・ だめだ。父親が今日は不在だ。
 それにしてもKSKのあの泣き声は気になる。尋常ではない。
 転んで段差の角におでこを強打した時もあんなに泣いてはいない。

 「手遅れになったら・・・」

 19:40 「緊急のため出かけます。すぐ戻ります」とメモを託し、車に飛び乗る。

 先日看護学校を無事卒業したばかりの姉に電話。
 「夜間はどこへ行ったらいい?」
 「まずは夜間受付が市のメディカルセンターにあるからそこへ。必要に応じて救急病院を紹介してくれるから。」
 とのこと。

 続いて嫁さんに電話。
 「今からとりあえず帰るから。保険証用意して、火の元消して、すぐ出られるように準備して。」

 メディカルセンターに着き、家族を降ろしてとりあえず会社に戻る。
 閉店し、〆ていると電話が鳴る。
 「軽度の火傷らしいんだけど、皮膚科の先生のいる病院を紹介された。皮膚のことなのでできるだけ早いほうがいいって。」

 早いほうがいいって言われてもこっちにも仕事がある。
 とりあえず最低限のことをこなし、スタッフさんにお願いをして飛び出る。
 メディカルセンターで3人を拾い、隣の市の総合病院へ。

 夜間救急というのにほかの患者さんは二組。
 受付にてメディカルセンターからの紹介状を提出し、待つこと10分。
 時間は21時をまわっていた。

 診察室に入ると看護士さんと、お医者さんがいらっしゃって、
 嫁さんがとりあえず貼った冷えピタに覆われたKSKを見て、瞬間戸惑った。
 「これは・・・」

 顔面全体の火傷、1歳3ヶ月。
 そら、「どうしたもんやら」とは思うだろう。
 「とりあえず薬塗っておきましょう。」と全体に薬を塗布してくださる。
 ながら、院内用の携帯で先生が電話をかけ、

 「夜分にすみません。1歳の子供さんなんですけど。はい。味噌汁かぶって。ええ。・・・・・・・」

 ほどなく年配のお医者さんがいらっしゃった。
 すみません。こんな時間にご迷惑をおかけして。すみません。と、心の中で言い続ける。
 「ああー。」
 初見して先生がおもわずもらした。それを聞いて、それなりにひどい状態なんだと改めて感じる。
 診察室に入ってからこれまでのわずかな時間に、見る見る内にKSKの顔は赤く腫れ上がり、まぶたも腫れ、眉間から鼻にかけてもただれてきているし、小指の先ほどの水泡が顔や首にいくつもいくつもできあがっていた。
 先生は眼球熱傷もおそらく大丈夫だろうとは仰っていただいたものの、ここまでまぶたも腫れてくるとびっくりしてしまって、左目が ちゃんと見えてないんじゃないのかと心配になるくらい。

 聞きたいことはきちんと聞いておかないといけないと思い、今晩はどうしたらよいものかと、明日以降はどうすればよいものかを、忙しそうな先生を捕まえて話を聞く。
 一通り治療していただいたあと、受付で一日分だけ薬がもらえるということで待っていると、姉から連絡があり、状況説明。
 正直、最初に見てもらったこの病院でお世話になろうかとも思っているが、この病院は外来が午前中のみだったり、先ほど診ていただいた先生が副院長の先生だったり、なにより地域的に生活圏を外れることもあり、どこかお勧めがあるかどうか聞いてみた。
 すると、就職したばかりの姉が「小児科専門のうちに来い」と言う。
 「いや。皮膚科じゃねえのかよ」と言うと
 とりあえず来いという。

 わかったと告げ、病院を出る。
 時すでに22時。明日3学期の終業式のKTAもよく働いてくれた。
 明日の通知表でオール良いだったらテレビゲームが買ってもらえるという約束なので、緊張していると言っていた。
 そして、春休みになったら嫁さんの実家に行く約束をしていたのだが、KSKがこんなことになったのでそれはキャンセルになることを了解してもらった。
 駄々をこねることもせず、いやな顔せずに我慢をする。KTA。ごめんな。

 そして、KSK、ごめんな。
 父ちゃんがしっかりしてないからな。KSKが痛い痛いになるんだな。ごめんな。

 なにより、かあちゃん、ごめんな。
 俺がしっかりしていたら子供の身に現れることはないんだけどな。
 今回自分を責めているやろう。
 「責めなくていい」と言ったところで責めるだろうから言わないが、気にしなくていい。「よかったなあ。」と繰り返し繰り返し口に出しているのは、そういうことなんだ。無事でよかったなあ。たいしたことなくてよかったなあ。ご飯も食べられるのか。よかったなあ。これが沸騰したお湯を頭からかぶったとかじゃなくてよかったなあ。KTAの階段20段落ちにくらべたらよかったなあ。
 よかったなあ。と、言うのは僕の役目なんです。
 僕が身動き取れる日でよかったな。
 あの時間でよかったな。
 救急すいててよかったな。
 姉が少なくとも医療にかかわっててよかったな。
 里帰りできなくなったけど、もしかしたら今回はなんかの事故に巻き込まれたりしたかもしれんからな。よかったな。

 22:30.家に帰り、夕飯を食べ、父にメール。

 「KSKが顔面に火傷。明日神様にお願いしといてください。」

 夜0:00
 父からなぜかEメール。

 「今お願いすんだ。」

 明日の朝でよいものを。相変わらず心配性だ。
 600キロ以上離れているものの、祈りが届いたと思わざるを得ない。

 ありがとう。ありがとう。
 KSK。かあちゃん。KTA。大丈夫だ。KSKは絶対大丈夫だ。傷痕が残ることもなく、きれいに治るよ。間違いない。
 このタイミングでやけどをしたということは、間違いなく治るものである、という条件が揃っているよ。
 ありがたいね。

 ごめんね。KSK。
 ごめんね。かあちゃん。
 ごめんね。KTA。

 そして、ありがとう。

 神様、ありがとうございます。