道ログ2

群馬県在住のおじさんがブログを書く

平林都 先生 とか

 ※以下、旧ブログより転載

最近テレビで接遇を唱えるマナー講師「平林都」先生というのをごらんになったことはありますか?
あまりテレビを見ない私が何度か見たくらいなのでけっこー取り上げられているのかと思いきやそうでもないらしく、まあ、職業柄たまたま目に付いただけかと。

ご存じない方はスルーでお願いします。
ご存知の方は、私はこれから、その平林先生のことが嫌いだという、何のためにもならない話を延々いたします。彼女を見て「素晴らしい!」とお感じになった方には先に謝っておきます。すみません。酷いこと言って。


まあ、ググっていただくと画像の一つもあたるでしょうから興味のある方にはごらん頂くとして、一言で言うと、企業を対象にマナー研修を行う女性講師で、一流企業をはじめ、年間300件とも言われる研修をこなす、いまや引っ張りだこの超人気講師なんだそうです。
特徴はその指導方法で、実にスパルタ。ご自身の信念に基づいて、できていない、又はできない人にはビシビシ指導する。相手が泣こうがわめこうが、口汚くののしるように指導する。


お客様をおもてなしするために。


「接遇」の心で・・・
ってちょっと待て。接遇ってどういう意味だ? なんか繰り返し平林先生が使ってらっしゃるから当然のごとく俺も使ってしまった。
「もてなすこと。接待すること」と国語辞典。
なんだ。普通じゃないか。


で、それがね? テレビで取り上げられてるんです。俺はもうすでに2、3回観た。あのね。でもね、それがね、汚い言葉ですけどー

「胸糞悪い」

内容でしたわ。
いや。平林先生がどうこうじゃなくて、結局のところその番組の切り方が気に入らないんでしょうけど、まるでショウ。平林ショウ。
番組を見てない人にとっては俺が何でこんなに嫌悪感を抱くのかって事がわからんでしょうが、いや、見た人はどっちかっていうと「すごいよね」って思っているのでしょうけど、あれをそういうふうに「すごいよね」に見せちゃうテレビの編集の仕方が嫌なんですよ。
まるで平林先生だけが本当のマナー講師だ、みたいな変なテンション。


ちょっと昔なら「カリスママナー講師」って言われてるね。絶対。
で、そのVTRを見たスタジオのタレント(久本まさみさんとかね)が、「すごいわー」とか言うのよ。「あんなんできひんわなー」「いっそ芸能人みんな先生に教えてもらったらいいんちゃう? きっとできひんわー。」ってこう、流れていくところへ、われらがおっぱい星人タモリさんが

「いや。芸能人はできるって。」と冷ややかに突っ込む。
そうなんだ。タモリさんはわかってる。
その前に見たときもタモリさんがいて、冷静だった

「結局のところ、接遇っていうのは、いかにお客様の前で演じることができるかってことで、そういう意味では芸能人とかっていうのはああいうことは難なくできると思うんだけどね。」

と、番組の流れぶった切って冷めたコメントをしてくれていた。そうなんだ。平林先生の言ってることもそうだし、勿論世の中に数多いる他のマナー講師の言うことだって、突き詰めればそういうことなんだ。


俺が平林先生のテレビを見て「この人嫌い」だと思ったのには理由がある。指導方法が嫌いだ。いや。別に実際に指導を受けたわけではないので分からないんだが、少なくともテレビの取り上げ方から見ると、俺は指導されたくない講師だった。
スパルタが売りなのかわからんが、ひどすぎる。言葉も汚いし、命令口調も聞くに堪えないし、相手を否定するようなことも言うし、少なくともお前にとっては生徒さんはお客さんていう立場でもあるわけだから、そんなものの言い方はないだろう? と思うことがたくさんある。
生徒を泣かそうがなにしようが自分の信念を貫いて指導する。それが気に入らないなら私を呼ばなければいいというお心は素晴らしいし、やはりその、マナーなんてもちろんのこと、その気配り心遣いは素晴らしすぎるんだが、気に入らない。
少なくともテレビを見た限りの個人的感想では、形を教えているにすぎないんじゃないかと。いやもちろん。形から入る接遇もあります。あるんですが、形を一方的に押し付けてはめ込んでおきながら、接遇の心ですって言われても、それは通じない。一時的にはそのように動くようになるだろうが、それは根本的な問題の解決にはなっていない。


あー。これについて話すと長くなるだろうなって思ったんだ。それはきっと、こんな奇特なものをお読みの方に少しでも伝えようとすると、ちょっと広い範囲で物事をお伝えしないと伝わらないだろうからなって思っていて。
ま、どこまでいけるかやってみます。


まず、平林先生が仕事を請けるのは、企業からです。まあ、経営者からですね。
経営者は社員教育の一環として、こういう研修を設けます。特にこの手の専門の講師を呼ぶ研修というのはけっこうな費用がかかります。
テレビでやられていたものを見ると、数日間に及ぶ研修があったように思います。
普通、この手の研修というのは、経営側も受講します。というか、ある程度の立場の人間まではさせられます。社員に何を伝えたいかを身をもって知るためです。経営側の人間というのは時にこういうわけの分からないことをします。
現場を知らないくせに現場の人間の苦労を知ろうとします。
結果、現場での苦労は何一つ知らずに、現場の人間が一日を割いて受講する研修の苦労だけを身をもって知ります。
で、時に「あんな大変な研修を受けて現場をやってるんだから、相当にいいサービスを提供できるようになるんだろうな。」と素っ頓狂なことを言い出す人まで出てくる始末です。


話が飛びました。
で、経営者は「平林先生にお願いすれば大丈夫。きっと現場も活気を取り戻し、お客様目線のサービスを提供してくれるはず。ESが整って、いよいよ本当の意味でCSが提供できるんだ! 平林マジックで、明日からわが社の社員が生き生きと働くに違いない! だってテレビでも取り上げられてるし、受講料だってこんなに高いし・・・」って思うわけです。
で、平林先生は、その期待に応えるべく、厳しくも暖かく、社員がお客様によいサービスを提供できるように指導をするわけです。
で、現場の人間はどこかで腑に落ちない思いを抱いて仕事をし、研修を受講します。


誤解を恐れずに言いますが、少なくとも接客業といわれる業種の人は、接客が嫌いではないはずなんです。お客様に喜んでいただけることにほかならぬ喜びを覚えるはずなんです。個人差はあれども。
ここでちょっと俺がよく言うことを言ってみます。
「他店との差別化っていうんだけど、正直に言って、スタッフ一人一人の、お客様に対応する丁寧さとか、親切さとか、お客様を想う気持ちって、他店に勝ることができるかって言うとなかなか難しいよね。それぞれ好きで接客業選んでいる人たちだし、やっぱり個々は丁寧だし親切だよ。じゃあ、どこで他店と違うとお客様に想ってもらえるかっていうと、たとえばチームワークだったり、お店スタッフ全体としてお客様をお迎えできているかどうかってこと。チームワークとか、分からないことを分からないままにしないですぐにその場で確認し合う様な体制が整っているかどうかとか。」

一人一人、お客様を想う気持ちはあるさ。当然だ。研究職でもないし、製造業でもないんだから。でも、想っていても、できない現状だってあったわけで。それをどうするかってことが最大の課題なんじゃないかって思うんだよ。
全員がおもてなしの心でご挨拶をする、ご案内をする、結構だけど、できない現状があったわけだ。それが必ずしも個々の意識の低さだったのか。接客マナーの低さが原因だったのか。
それもあるだろうが、それがすべてじゃないだろうと思うんだ。見ていて思ったんだ。
そこには、経営的な問題がはらんでいることはないのか。って思ったんだ。
おいしいケーキがあって、おいしいケーキをお客様のために毎日作る職人さんがいて、おいしいケーキをお客様に提供する販売スタッフさんがいて、マネジメントする店長さんがいて、経営する人間がいて。

忙しくておろそかになっちゃうんですよね。
っていうのって、恐ろしく真実だと思うよ。
忙しかったら接遇しなくてもいいのか? って先生は怒るだろうけど。
そら、模範解答は忙しくてもきちんと接遇する。なんだけど、正直そんなこと言ってられない時間帯はあるんです。っていうのが現状。
それはサービスの現場ならどこにでもあるはず。
じゃあ、それを解消するためには、何が必要か。
勿論、接遇の心は大事。
忙しい中にもできることはある。もちろんだ。
でも、それだけではできないことがある。物理的な問題もある。
まあ、ぶっちゃけてしまうと、人が足りないということとか。

頭数いりゃ、接遇だろうがなんだろうがしてみせますよ。という意見だってあるだろう。
マナーがきちんとしていれば、どんな状況だってお客様にご満足いただけることができるんだと言わんばかりの研修内容、いや、テレビの取り上げ方はおそろしい。
悪いが言わせてもらうが、きちんとしたマナーで接客をするのには、時間もかかるし、その分お金もかかるんです。というか、時間がかかれば損失する機会が増えるんです。サービスというのは、いかに質を落とさずスピードを上げるかということになってくるんですけれど、ですが、それでも敢えて言わせてもらうなれば、やっぱり「良いサービスを提供するにはそれなりにお金がかかるんだよ」ということだ。


ちょっと筆がすべりすぎているので話を修正する。
俺も少なくない回数、プロのマナー講師の研修を受講してきたと思う。
本当にためになったし、今の自分の根幹を成すものをいくつもいくつも教えていただいたと思っている。
特に印象に残っているのは初めてのマナー研修で聞いたことだ


「マナーとは、自分の気持ちを相手に伝える手段である。」


これは、今でも新人スタッフの研修に携わるときなど、ある程度の新人には必ず言うようにしている。

どうして身だしなみをきちんとしないといけないんですか?
どうしてきちんとお辞儀をしないといけないんですか?
どうして手の指し示しはこうしないといけないんですか?

それは、あなたが、お客様に、ご来店くださりありがとうございます、という感謝の気持ちを伝えるために、そうするんだよ。と。

俺が接してきたマナー講師たちは、皆一様に(同じ会社の講師でしたからね)テンションが高く、時に鬱陶しいのだが、それでもサービスについて、「こんなに素晴らしい経験をした」とか、「あれは素晴らしいものだ!」とか熱く語ってくれたし、「皆さんにもそれができるんです。しかも毎日そのチャンスに恵まれているんです。」なんて、すごく前向きになれる言葉を投げかけてくれた。
まあ、俺なんかはもうすでにそういうのアレなんだけど、20台前半の女性スタッフたちは、ものすごくやる気になって帰ってくる。
その講師が平林先生だったろ思うとおそろしくていかん。


先日、また違ったマナー講師のセミナーを聞いてきた。どうやら15年くらい国際線のCAを経て、今はそういう講師をやっていらっしゃるそうなんでした。
その航空会社では「ホスピタリティ」をホスピタリティといわずに「一期一会」という言葉を使っていたらしい。
「今日も当社の翼をお選びいただいてありがとうございます。その感謝の心で精一杯のサービスを提供させていただきます。
そして、もし、このサービスにご満足いただけましたならば、是非また、当社の翼をご利用くださいませ。」
という意味が込められた「一期一会」だそうだ。

素晴らしく、感銘を受けた。「是非また当社をご利用くださいませ。」というのは、素晴らしいと思う。そして、当時の社員さんたちは誇りを持ち、厳しく先輩から指導されながらも世界を飛び回っていたそうだ。

その会社のCAさんたちが今はどうかということはセミナーの中では触れられなかった。その後の懇親会の中などで色々と聞いていると、講師の先生が在籍当時のその航空会社のサービスは非常に素晴らしいものだったけれど、今はなかなかそうでもないということを聞いた。その人は、今なお当時のサービスクォリティが維持されているようであれば、外国の会社から救われるようなこともなかっただろうに。という話までしていた。

なるほどやはりそうかと思った。
本当によいサービスを提供するには、金がかかるのだ。サービスマンたちのモチベーションを保つには、それなりの福利厚生が必要だし、お客様のために全力を尽くせるような体制を会社として作ってあげなければいけない。
お客様のため以外のことをやたらとしなければいけないサービスマンたちは、どうしてもよいサービスを提供できない時間が増えていく。
これは経営的な要因が大きく働く部分でもある。いくら接遇という接客マナー=技術を叩き込んだだけでは解決しないのである。


ついでに言うと、たとえばリッツカールトンや、デズニーや、高級老舗旅館なんかにいらっしゃるお客様と、おいしいケーキが食べたいとか、500円のランチを食べに来たとか、ケータイのお金払いにきたとか、そういうお客様とかを、まったく同じサービスを提供するかのように論じてはいけない。
タダ単に用事を済ませて帰りたいんだよね。っていう人は、少なくないのだ。


その上で言うが、接客に従事する人間は、平林先生の教えることや、俺たちが口うるさく言うような「基本的なマナー」は、「やってみて」と言われてすぐにできるようでなければいけない。それは基本だからだ。基本ができていなければ、どんなに応用しようとしてもマナーが乱れるのだ。つまり、お客様をお迎えする心が整っていないことになるのだ。だから、それを日常やっているかやっていないかは問題ではなく、必要となったときにきちんとできるかどうか、なのである。


だからタモリさんは、「演じることができるかどうか」というわけで、それだけの引き出しをきちんと持っているか、そして、必要なときにそれをきちんと体現できるかどうかが必要なんだ。それって、役者とかタレントとかと相通ずる部分が大きいよね。って言いたかったんだと思う。
逆に、どんなにお客様のことを思う気持ちがあっても、マナーがきちんとできない。=その気持ちをお客様に伝えることができないスタッフは、空回りするだけで、評価することはできないからね。


まあ、収集つかないだろうなーと思って書き始めたんだけど、まさかこんなにとっ散らかるとは思わなかった。
これ書くのに一時間かかった。
もったいないので消さない。